「酢を飲むと骨が軟らかくなる」といわれている。その俗信はすでに江戸時代からあった。
『雲錦随筆(うんきんずいひつ)』(文久二年・1862年)に「脾をわずらう者、酢を多く食してはならない。多く食すると筋骨を損じる。また胃も損ずる。男子に益はない。顔色を損じる。酢を食らうと、歯が軟らかになるといわれている」とある。
サーカスなどに出る軽業師(アクロバット)は酢を飲んで体(骨)を軟らかくしているといった話が、かつてよく聞かれた。
魚を酢につけていると軟らかくなるけれど、お酢を飲んでも体が柔らかくなることはないという話。
でも、大昔からお酢は「柔軟な体」になれると思われていたとか。お酢の酸味…すっぱい感じはカラダに何らかの効果がありそうですもんね。
そういえば、銀塩写真のプリント現像をするときに使用されている停止液も酢酸で、長い時間、手を液体に浸けていると皮膚が溶け、指の指紋が無くなると聞いたことがあります。
この、皮膚が溶けて“ぬるぬる”している状態は、なんとなく肉体(筋肉)が軟らかくなっている印象を受けますね。こういったタンパク質を“ぬるぬる”にする酢効果が元になって、「酢を飲むと体が軟らかくなる」という説が広まっているのかもしれないですね。
作者: 北嶋廣敏 (著)