こうして、牛を倒すと、牛は立ち上がろうとする。その刹那に手刀で打つ。そのとき、牛の立ち上がる力と手刀の力が合わさって始めて角を折れるのである。
牛はいつも同じように立ち上がるわけでもないから、このタイミングが実に難しい。
拳一つで47頭の牛の角を折り、3頭は顎の下への攻撃で即死させたという極真空手の大山倍達さん。ツノを折るための条件がいくつかあるようです。
まずは、6歳以上の牛であること。発育がひと段落している牛は、何とか折ることができるそうな。そして、相手をするには500キロ以上の牛だと厳しいけれど、興行的には250キロ以上でないと盛り上がらないという。ということは、300~400キロくらいの牛を相手にしていたということでしょうか。
次に、肉体的な条件として、走力とパワーと握力が重要とのこと。
<走力>
50メートル6秒で走る走力がないと、逃げる牛に追いつけない。ちなみに、大山倍達さんは、100メートルを11秒で走れたそうです。
<パワー>
ペンチプレスで200キロ以上、ジャークで150キロ以上挙げるパワーがないと、暴れる牛を制御できない。
<握力>
親指と人差し指で10円硬貨を曲げられるほどの握力。二本指だけで逆立ちが30秒できる指の力。
さらに、これら条件に加え、一番大切なのが上記の“タイミング”のようです。牛を倒してから起き上がる瞬間を狙って角を攻撃する。自分の腕力だけでなく、牛の力を利用することで可能になる技のようですね。
ちなみに、犠牲になった牛たちは屠殺直前の牛だったそうです。そのときのことを振り返り、殺される運命にある牛であっても「気の毒なことをした」と後悔している大山倍達さんのコメントが印象的でした。