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ざつがくしてます☆ by ゆうはん

作用反作用

 

 

 

 

たとえば、立っている状態から急に「しゃがめ」といわれたら、無意識のうちに両手を上げ、ちょうど「バンザイ」をするようにしゃがむでしょう。


それは、両手をすばやく上に動かすという反作用を利用して、早く下にしゃがむことができるからです。


この現象は、作用・反作用のうち「分裂」現象とみなすことができます。つまり、ロケットやジェット機が燃焼ガスを後方に噴射して、その反作用で推進していく場合に相当すると考えてよいのです。


この「しゃがむ」という動作は、基本的には、筋肉の力を利用して体を縮めてもいるし、あるいは重力を利用してしゃがんでもいます。


しかし実際は、このように体の一部を反作用として、それ以上に「より速く」「より強く」動作をしようとしているのが事実です。

 

 

スポーツ上達の力学―イラストでわかるスポーツ動作の原理

 

 

 


宇宙空間でドライバーでネジを回そうとすると、ネジは回らずに回そうとしている自分の体が回転してしまうそうですね。ネジを回そうとする方向とは逆に。


これは作用反作用と呼ばれるもの。身近な例ですと、壁を押すと、壁から押し返される力が働くこと。運動を行う場合、作用の裏にはどこかに反作用があり、それを気づかないうちに相殺している。重力(重み)であったり、踏ん張っている足であったり。


「もしも宇宙空間で戦ったら?」という内容のブログを以前書いたことがありますが、重力や足の踏ん張りで反作用を相殺できずに、思い通りに動けない。たとえば、相手をパンチしたつもりが、相手を殴った力で自分が後方へと飛んでいくように。


たしかそのときにもご紹介しました「水の中で動くイメージで行うと稽古の質が変わる」という話。宇宙空間までいかなくても、浮力によって体重が活かされず、足の踏ん張りがきかない状態で動くイメージをすることで反作用を意識しやすくなるというもの。

 

「動中に静あり。静中に動あり」という武道の言葉も、動作に伴う相反する働きを意識することで、暴れる反作用を沈静化(あるいは利用)するという意味合いなのかもしれないですね。

 

動中に静あり…動いていても、働く反作用をキチンと内部処理している。勢いや反動に振り回されることがない。たとえば、お辞儀で頭を前に傾けると同時に、腰を後方へ引くような動き。


静中に動あり…止まっていても、反作用を利用することで急な動き出しができる。静かに動き出し、静かに止まる。たとえば、上記引用のような手を上げてしゃがむ動き。


重心感覚を利用した古武術の動き…“浮きと沈み”“抜重”といわれる動作もこうした作用反作用が内在している感覚だと思われる。


こうした感覚は、氷の上で歩く、河原で石の上を転ばずに移動する、すべりやすい泥の上で稽古する、立てたレンガの上で足捌きを行うといった様々な武術の稽古の中に現れているようです。


これらは、反作用を意識してうまく動けるかどうかの試金石であり、感覚を養うトレーニング。転んで痛い目を見るのが一番の上達法なのかもしれないですね。

 

 

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