荒川さんの指導がユニークだったのは、紐で吊った新聞紙の短冊を刀で切らせたり、合気道の稽古に出かけたり、バットを振ること以外の鍛錬を取り入れて、あらゆる角度から選手たちのやる気、集中力を高めようとしたことでした。
新聞紙の短冊を刀で切るというのは、非常に難しいことです。
(中略)
これは、野球の場合の、バットのヘッドを走らせるということに通じます。ボールをバットでひっぱたくのではなく、ボールのなかを通す感覚が刀の練習によって身につきました。
ボールを切ってしまう、そういう感覚です。
一本足打法は合気道(藤平光一氏の心身統一合気道)の立ち方(重みを丹田に落ち着ける)と、日本刀による短冊切りの感覚によって完成したとのこと。
それは、ボールを叩くのではなく、真芯をとらえて真っ二つに斬る感覚。刀でスライス切りするイメージでスウィングしていたというのが興味深いです。
同じ動作をしていても、叩くイメージと、切るイメージでは効果が変わりますもんね。叩くイメージですと打楽器のように当たった瞬間にボールとの接点で跳ねるような感覚が強く、切るイメージですと貫通するようにしてボールの接点から先(反対側)まで抜ける感覚が強いのだと思われる。
武道の突きや蹴りといった打撃技も、“打つ”というよりも“刺す”というイメージで行った方が威力が浸透しますし、行為(動作)をどのようなイメージで捉えるかが上達のポイントなのかもしれないですね。