黒田 動こうとしたときに踏んばってはいけないということです。
高岡 それは正に全身の問題だと思いますが、足底面の使い方には言及されないんですか。
黒田 ないですね。感覚的に首から下がないような状態になっているので、ちょっとでも踏んばりがかかると非常に嫌な感じがします。
(中略)
「無足の法」は足捌きに関してのみの術法ではありません。足から入りますが、それは結局、浮身のことなのです。
高岡英夫の極意要談―「秘伝」から「極意」へ至る階梯を明らかに
『地に足が着かない』という言葉がありますが、“不安定”“落ち着いていない”“基礎がしっかりしていない”といったマイナスのイメージが強くて、あまり良い状態を述べたものではありませんよね。
でも、年齢や体格に関係なく戦える武術では、“地に足が着いていない感覚”が求められているというのが面白い。“不安定”“落ち着いていない”“基礎に支えられていない”というマイナスの要素がプラスの要素に活用されているのがとても興味深いです。
ちなみに、黒田鉄山さんの著書によりますと、“無足の法”ができるようになると、一畳のたたみの上で何回も前回り受け身が取れるそうです。黒田鉄山さんは1枚の畳の上で前進せずに30回以上回れるということなのですが、頭部が真下に落ちるくらいその場で回転している写真が印象的でした。